2023/01/17 組織・ガバナンス

内部統制とは?目的や整備の必要性、6つの構成要素を解説

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内部統制とは何なのか、目的や必要性を調べている経営者や担当者もいるのではないでしょうか。また、効率的な内部統制を実現するための方法を模索している企業も多いでしょう。効率化を進めるには、内部統制を理解した環境づくりが必要です。

この記事では内部統制の定義や必要な理由、目的などを説明したうえで、内部統制実施基準を構成する6つの要素を解説します。内部統制を実現するための3点セットや効率化を実現するためのツールも参考にしてください。

内部統制とは?金融庁の定義をわかりやすく解説

内部統制とは、企業が健全で効率的に事業を実現するための社内管理体制です。金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制について以下の目的と基本的要素を定義しています。

内部統制の4つ目的

  • 業務の有効性および効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令などの遵守
  • 資産の保全

内部統制の6つの基本的要素

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動情報と伝達
  • モニタリング(監視活動)
  • ITへの対応(情報技術)

それぞれの目的や要素の詳細は、後章を参考にしてください。

わかりやすく説明すると「内部統制における4つの目的を達成するには6つの基本的要素を取り入れる必要がある」ということです。

内部統制と混同されやすい言葉もあるので、以下で解説します。

内部統制と混同されがちな言葉

内部統制と混同されがちな言葉は「ガバナンス」「コンプライアンス」「内部監査」です。内部統制との違いも押さえておきましょう。

ガバナンス

ガバナンスは、健全な事業が行われているか「株主・取締役会が経営者を監視」することです。経営者が従業員を管理する内部統制とは異なります。

コンプライアンス

コンプライアンスは、企業やそこで働く従業員が法令・規則・マナー・道徳を守るなど、広い意味で使われる言葉です。内部統制はコンプライアンスを守るための手段といえます。

内部監査

内部監査は、企業が適正な事業を行っているかを社内の人間が監査するものです。社内管理体制のひとつなので内部統制と似ていますが、内部統制の仕組みの一部に内部監査があると考えましょう。

内部統制の整備が必要な理由|不備があると何が起こる?

内部統制の整備が必要な理由は、会社法と金融商品取引法で義務づけられているためです。

内部統制が義務付けられている会社は「取締役会を設置している大会社」と「上場企業」です。

会社法施行規則100条では、取締役会を設置している大会社に内部統制を義務づけています。大会社とは最終事業年度の貸借対照表への計上額が「資本金5億以上」「負債200億円以上」のどちらかに該当する株式会社です。金融商品取引法24条の4の4第1項では、上場企業へ内部統制報告書の提出を義務づけています。

義務づけられている株式会社において不備があった場合は、会社法・金融商品取引法違反につながります。

また、東京証券取引所の有価証券上場規程207条の上場審査では、社内管理体制の適切な整備が求められています。上場を目指す企業においては、内部統制に不備があることは上場廃止にもつながりかねないため、社内管理体制の整備を進める必要があります。

内部統制を実施する4つの目的

金融庁では「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」において、内部統制の目的を定義しています。内部統制を整備し健全な事業を継続的に展開するには、内部統制の正しい目的への理解が必要です。ここでは、内部統制4つの目的それぞれについて解説します。

同基準のなかで内部統制の目的とされているのが、以下の4つです。

  • 業務の有効性・効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 法令遵守
  • 資産の保全

業務の有効性・効率性

内部統制は、財務報告の信頼性を高める効果も期待できます。企業の財務報告とは、株主・銀行・債務者・税務申告・税務署など利害関係先に財務情報を報告することです。

財務情報とは、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算表などの法定開示書類を指します。例えば、株主の投資判断や銀行など取引先の契約判断材料になる書類です。不備や不正があれば、信頼性に影響を与えます。
内部統制により健全な事業を行い信頼性の高い財務報告ができれば、企業も高い信頼性が得られるでしょう。

財務報告の信頼性

内部統制は、財務報告の信頼性を高める効果も期待できます。企業の財務報告とは、株主・銀行・債務者・税務申告・税務署など利害関係先に財務情報を報告することです。

財務情報とは、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算表などの法定開示書類を指します。例えば、株主の投資判断や銀行など取引先の契約判断材料になる書類です。不備や不正があれば、信頼性に影響を与えます。

内部統制により健全な事業を行い信頼性の高い財務報告ができれば、企業も高い信頼性が得られるでしょう。

法令遵守

内部統制には企業が法令を遵守するための環境をつくる狙いもあります。会社の不祥事や企業犯罪は株主や取引先などの利害関係先への影響だけにとどまらず、世間からの信用も失ってしまいます。

インターネットやSNSの発展により、世間の企業を見る目は従来以上に厳しくなっています。法令違反により消費者、取引先から信頼を失うことは、企業経営に大きなダメージを与える問題です。

事業の存続が困難になることもあるので、法令違反が起きないように、内部統制によって従業員に法令遵守を徹底させる必要があります。

資産の保全

内部統制は、資産の保全も目的のひとつです。企業では資本金を元に事業を行うことで利益を得ています。資金が底をついてしまえば、利益を得るための元手を失うので事業は続けられません。

内部統制により適切な資産の管理や運用を徹底すれば、利益につながる事業への効率的な資金投入が可能です。また、しっかりと資金管理されていれば横領など、内部者による不正行為を防げます。

資金の保全は「業務の有効性・効率性」「財務報告の信頼性」「法令遵守」にもつながります。内部統制4つの目的はそれぞれ独立していますが、互いの関連性は高いといえるのです。

内部統制実施基準を構成する6つの要素

金融庁は内部統制実施基準を構成する6つの要素について、4つの目的を達成するために取り入れるべき要素と定義しています。6つの基本的要素は以下のとおりです。

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
  • 情報と伝達
  • モニタリング(監視活動)
  • ITへの対応(情報技術)

ここでは、内部統制6つの基本的要素それぞれについて解説しましょう。

統制環境

まずは内部統制の環境づくりが必要です。統制環境は、ほかの5つの要素にも関連する重要な基盤になります。内部統制の目的を達成するために重要なのは、統制環境を全従業員へ周知して意識づけることです。

財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、企業の統制環境の例として以下などを挙げています。

  • 誠実性・倫理観
  • 経営者の意向・姿勢
  • 経営方針・経営戦略
  • 監査役などの有する機能
  • 組織構造や慣行
  • 権限・職責
  • 人的資源に対する方針と管理

全従業員へ周知するなら、効果的に情報共有できる環境づくりが求められます。

リスクの評価と対応

リスクの評価と対応とは、企業の目標達成を阻害するリスクを評価し、適切な対応を行うプロセスのことです。 

リスクの評価とは、企業活動で起こりうるリスクの大きさや発生する可能性、頻度などの分析を指します。リスク対策は、リスク評価についてどのような対応をするのか検討することです。リスクを回避するのか低減するのか、移転・受容するのかなど、適切な対応を選択します。 

リスク評価基準を全従業員で共有すれば、内部統制の目的達成につなげられるでしょう。

統制活動

統制活動とは、経営者の指示や命令どおりに実行されるための環境づくりです。マニュアルやルールの整備、権限や職責の付与、職務の配分など、多くの要素が含まれます。

企業には多くの部署があるので、経営者がすべてを監視するのは現実的ではありません。そのため部署単位やプロジェクト単位で、責任者を設置し、経営者の指示通りに業務を遂行するための仕組みづくりが必要になります。

ルールに沿った業務進行ができているかの管理を疎かにしてしまうと、ミスや内部不正のリスクが高まります。そのため適正な流れで申請・承認のプロセスを業務に組み込むことが重要です。

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情報と伝達

情報と伝達とは、情報が必要な人や部署、組織などへスピーディーに正確な情報共有ができる環境づくりを指します。重要なのは情報を必要とするすべての人や部署に情報が行き届くことと、情報は正しく理解できる内容であるかです。

正確でスピーディーな情報共有では手段がカギといえます。ビジネスツールなどを導入して、効率的に情報共有するのもいいでしょう。また、情報と伝達には情報セキュリティの要素も含まれているので、安全性の高い伝達手段の検討も求められます。

モニタリング(監視活動)

モニタリングとは、内部統制が社内で有効に機能をしているかを評価することです。モニタリングには日常的モニタリングと独立的評価の2種類あり、別々に行われることもあれば組み合わせて行われるケースもあります。

日常的モニタリングは、通常業務の経営管理や業務改善などに組み込むことで内部統制の有効性を常時監視する活動です。一方独立的評価は、通常業務に組み込むものではなく定期・随時に行われます。例えば、経営者や取締役会、内部監査などを通して行われるものです。

ITへの対応(情報技術)

ITへの対応は内部統制4つの目的を実現するのに、もっとも重要な要素のひとつです。IT技術は利便性と脆弱性、業務への影響の重要性などを考慮したうえで評価されます。そのためITへの対応は「IT技術の導入・活用」「導入・活用により内部統制を有効に機能させられているか」がポイントです。

IT技術を導入したとしても、自社に合っていないものやトラブルが頻発するものでは意味がありません。IT技術が内部統制にどう影響するかを検討したうえで、自社に合ったシステムを導入することが求められます。

内部統制を実現するための3点セット

内部統制を実現するための3点セットは以下のとおりです。

  • 業務記述書
  • フローチャート
  • リスクコントロールマトリックス

業務記述書

業務情報を記載する書類です。業務内容や対応者、利用ツールなどを記載します。業務内容だけでなく、リスクコントロールの把握や業務への理解度などの確認が可能です。

フローチャート

業務の流れを表したものです。部署ごとに業務は異なるので、それぞれで作成します。情報共有すれば、部署間でのやりとりが必要な業務で他部署のフローも把握できます。

リスクコントロールマトリックス

業務において想定されるリスクと、リスクに対する統制活動を明確化した表です。それぞれの業務で必要になります。

内部統制は誰がどのように実施するか?

内部統制とは、企業において誰がどのように関わって実施するものなのでしょうか。内部統制は、経営陣から従業員までのすべての人が実施するものです。

当然ですが組織では人により立場が異なるので、それぞれで内部統制への関わり方も異なります。

ここでは、経営陣から従業員までそれぞれどのように関与するのか、そのためには何が重要なのかを解説します。

経営陣から従業員まで全員が関与

内部統制は、経営陣から従業員までのすべての人間が関与するものです。では、立場別ではどのように内部統制に関与するのでしょうか。

経営者

経営者は内部統制の全責任を担う役割です。内部統制が有効に機能するための、整備を行います。また、内部統制報告書の提出をするのも経営者です。

取締役会

取締役会は、内部統制の方針決定や運用の監視などを担います。

監査役・監査委員会

客観的な目線で内部統制の運用を監査し、効果の検証なども担います。

内部監査人

企業内部から、内部統制の整備や運用の効果検証などを行います。

従業員

内部統制を達成するために、決まったことをルールに沿って遂行する役割があります。正従業員だけでなく、派遣従業員やアルバイト・パートなど雇用形態にかかわらず内部統制達成への意識が必要です。

現場でのオペレーションの効率化が重要

内部統制の目的を達成するには、現場でのオペレーションの効率化が重要です。内部統制を正しく全社に周知することは簡単ではありません。目標を達成するためには、現場サイドへ具体的な推進方法や手順をタイムリーに示す必要があります。

決定事項を現場サイドの従業員へスムーズに周知するには、社内に効率的な情報共有ができる仕組みづくりが求められます。そのためには、誰でも簡単に情報へアクセスできるシステムの導入も検討しましょう。

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内部統制の効率化にはkickflowがおすすめ

内部統制の効率化なら、業務効率化を図れるクラウドワークフローシステム「kickflow」がおすすめです。

kickflowは、情報共有を迅速に行えるので決定事項を全社へスムーズに周知できます。内部統制の効率化を図れるシステムとして以下の特徴があります。

  • ユーザー目線での開発
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  • REST APIによるスピーディなデータ連携
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kickflowは、ワークフローシステムに課題を感じていた300以上の企業への調査やヒアリング結果を参考に開発されています。したがってkickflowは、多くの企業が求める利便性や機能性、柔軟性を備えているワークフローシステムです。

kickflowはユーザーの声から生まれたワークフローシステムです。内部統制の効率化を図るなら、ぜひお問い合わせください。

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まとめ : 内部統制の目的を達成するための環境づくりを進めましょう!

内部統制について、金融庁が定義づけしている4つの目的と6つの基本的要素を中心に解説しました。

内部統制が義務づけられている企業は、「資本金5億以上」「負債200億円以上」のどちらかに該当する株式会社です。ただ義務づけられていない企業においても、内部統制により業務の効率化を図れます。上場審査にも影響するので、普段から内部統制を意識した取り組みも重要です。

内部統制の目的は経営陣だけが関わるものではなく、企業全体が関与することで達成されます。企業全体にスムーズな情報周知をするなら、ビジネスツールなどの導入も検討しましょう。