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ワークフローの承認が遅い。待ち時間は4つに分かれる

ワークフローの承認が遅い。待ち時間は4つに分かれる

ワークフローの承認が遅いのは、承認者が押さないからなのか

ワークフローの承認が遅い。管理画面で平均承認日数を出すと3.2日と出る。現場が言っていた「2週間かかった」とは、どう見ても合いません。

どちらが間違っているわけでもなく、測っている区間が違うだけです。ただし、その区間の違いを自分の言葉で説明できないうちは、経営にも現場にもどちらの数字で話せばいいかが決まりません。

ワークフローシステムが出す承認日数は、申請ボタンが押された時刻を起点にしています。それ以外に起点の置きようがないので、設計としては自然です。一方、現場が数えている日数は、依頼を受けて書式を開いた日から始まっています。

起点が違えば数字も違う。ここまでは説明がつきます。説明がつかないのは、起点をそろえても差が埋まらないときです。

承認が遅いと言われたときに最初に出てくる手は、リマインダーの設定と経路の段数の見直しです。どちらも効く場面はありますが、効かない場面もあります。効くかどうかは、待ち時間がどこに溜まっているかで決まるためです。

本記事では、1件の申請にかかる待ち時間を4つに分けて並べます。どこに手を打つかを選ぶときの材料として使ってください。

ワークフローの承認が遅いのは、承認者が押さないからですか

承認者が押していない時間は、遅さの一部でしかありません。押すまでの時間は、気づくまでと判断するまでに分かれます。そして1件の申請には、承認者がまだ登場していない時間も含まれています。

承認リードタイムとは、申請から決裁までに要した時間のことです。多くの製品が管理画面で出せる数字で、書式ごとや部署ごとの平均として表示されます。現場が数えているのはその外側を含めた時間で、依頼を受けた日から始まっています。

本記事では、次の1件を通し例として使います。従業員1,200名の製造業で出た、地方拠点用のタブレット12台の購入稟議。金額は96万円で、経路は課長・部長・管理本部長の3段です。

日付

起きたこと

8月28日(金)

拠点から依頼を受け、総務の担当者が書式を開く。見積が1社分しか揃わず下書きのまま置く

9月2日(水)

見積が揃って申請。同じ日に課長が承認

9月3日(木)〜9月7日(月)

部長が出張。戻った月曜の朝に承認

9月7日(月)

管理本部長が同じ日に開く

9月8日(火)

台数の根拠を問う形で差し戻し

9月9日(水)

担当者が拠点の人数と入れ替え予定を追記して再申請

9月10日(木)

決裁

システムの数字は9月2日から9月10日までの8日。拠点と総務が数えているのは、8月28日から9月10日までの13日です。管理画面に出ていた平均は3.2日でしたから、この1件は平均の中では長い側に入ります。

同じ1件を見ていて、5日ぶんの差がついています。差の中身は、書式を開いてから申請ボタンを押すまでの時間でした。

同じ1件の申請でも、現場が数える13日とシステムが測る8日では数えはじめる時点が5日ずれることを示した図

システムの承認日数は、どこからどこまでを測っていますか

申請ボタンが押された時刻から、決裁が下りた時刻までです。書式を開いてから申請するまでの時間は入りません。差し戻しがあった申請では、起点が製品によって動きます。

数字が動く要因は、主に3つあります。

1つ目は下書きの扱いです。下書きは、承認日数の計算に入りません。申請前のデータだからです。作成日時を別に持っている製品なら、下書きから申請までの日数は出せます。持っていなければ、その区間は記録として残りません。

2つ目は差し戻しの扱いで、製品によって分かれます。1件の中に何ラウンド目かを持ち、最初の申請時刻を起点として残す製品があります。一方で、再申請の時刻に起点を上書きする製品もあります。後者だと、通し例の申請は8日ではなく1日として集計されます。

差し戻しの多い書式ほど、この違いで数字が変わります。平均が短く出ている書式は、速いのか、差し戻しで起点がリセットされているのか。数字だけでは見分けがつきません。起点をそろえたつもりでも、この仕様ではもう一度ずれます。

3つ目は暦日か営業日かです。通し例の13日のうち、土日は4日。暦日なら13日、営業日なら9日です。システムの8日も、営業日で数えれば6日になります。どちらが正しいということはなく、経営に説明する数字と現場が体感する数字がずれる原因のひとつではあります。

ここまでを整理すると、確かめる順番は次のようになります。

確かめること

見分け方

起点は申請時刻か、下書きの作成時刻か

下書きのまま数日置いた1件を、管理画面の数字と突き合わせる

差し戻し後の再申請で起点が動くか

差し戻しを1回はさんだ1件を、日付と突き合わせる

暦日か営業日か

金曜申請・月曜決裁の1件が1日と出るか3日と出るか

平均か中央値か

極端に長い1件を除いたときに数字が動くか

4つとも、実際の1件を選んで突き合わせれば答えが出ます。集計の仕様を調べるより先に、この突き合わせをやるほうが早く済みます。

待ち時間は、どの4つに区切れますか

書く時間、気づかれるまでの時間、判断の時間、往復の時間の4つです。1件の申請は、この4つを組み合わせた長さになります。

1つ目は、書く時間です。依頼を受けてから申請ボタンを押すまで。見積を待っている時間、前に書いた申請を探している時間がここに入ります。この金額なら稟議か購買申請かを選び直している時間も、同じ区間に乗ります。通し例では5日ありました。

2つ目は、気づかれるまでの時間です。承認依頼が届いた時点から、承認者が画面を開くまでの時間がこれにあたります。出張や会議で開けない時間と、通知に埋もれて気づいていない時間が混ざります。通し例では、課長が同じ日に承認しているので0日、部長が9月2日から9月7日までの5日です。

3つ目は、判断の時間です。画面を開いてから、押すか差し戻すかを決めるまで。12台という数字がどこから出てきたのかを誰かに確認する、規程を読み直す。そうした時間がここに入ります。管理本部長が開いた9月7日から、差し戻した9月8日までの1日にあたります。

4つ目は、往復の時間です。差し戻しから再申請を経て、その段の判断がもう一度終わるまで。申請者が直す時間に、2つ目と3つ目がもう一周ぶん乗ります。通し例は差し戻した段から再開する設定だったため、再承認は管理本部長だけで、9月10日に決裁が下りました。設定によっては、申請者まで戻して全段を回り直す形にもなります。

分けてみると、効く手が区間ごとに違うことが見えてきます。

区間

通し例での長さ(3段の合計)

太くなる原因

効きやすい手

書く時間

5日

社外からの資料待ち、書式が分からない

書式の入口の整理、必要な添付の明示

気づかれるまでの時間

5日

不在、通知に埋もれる

通知先の見直し、代理承認、リマインド

判断の時間

1日

判断材料が画面にない

申請画面に載せる情報の設計

往復の時間

2日

差し戻しが起きる

入力チェック、記載例

気づかれるまでの時間と判断の時間は、承認者の人数ぶん繰り返されます。通し例で5日と1日に収まっているのは、課長が同じ日に押し、部長が戻ってすぐ押したためです。

承認者が押していない時間として説明できるのは、4つのうち2つ目と3つ目だけです。13日のうち5日は、承認者のところに届く前に過ぎていました。

差し戻しがなぜ起きるかについては、稟議の差し戻しが減らないのは、承認する側の判断基準が申請画面に載っていないからで扱っています。

気づかれるまでの時間と判断の時間が承認者の段ごとに繰り返され、書く時間は1件に1回だけであることを示した図

経路の段数を減らすと、どの待ち時間が短くなりますか

2つ目と3つ目が繰り返される回数が減ります。1つ目の長さは段数では変わらず、4つ目は再申請後にどこから回り直すかで変わります。

通し例で試算します。3段のうち部長を外して2段にすると、9月2日から9月7日までの5日が消えます。13日が8日になる計算です。

残るのは、書く時間の5日と、判断と往復の3日です。段数を1つ減らしても、同じ長さの5日がもう1本残ります。

段数を減らすかどうかは、速さだけでは決められません。部長を外すということは、96万円の購買について部長が見る機会をなくすということです。決裁権限規程で部長の確認が求められているなら、そもそも外せません。

経路を短くする側と、統制を保つ側。どちらを選んでも何かを引き受けます。経路そのものが増え続けてしまう理由は、承認経路のメンテが終わらない理由で整理しています。

なお、承認が遅いという相談に対してリマインドの間隔と通知先の設定から入ると、いちばん太い区間が申請ボタンを押す前の時間だった場合に1日も効きません。区間ごとに割って太いところを特定するのが、手を選ぶ前の工程になります。承認者が不在のときに誰へ回すかは、代理承認の設定は、本人だけに持たせて足りるかで扱っています。

情シスだけで動かせる区間は、どこですか

気づかれるまでの時間と往復の時間です。書く時間と判断の時間は、業務を持っている部門の合意が要ります。

それぞれ、手を打つと別のものを引き受けます。

書く時間を詰めるなら、書式を業務単位に分けて、必要な添付を入口に書く。どの業務を1つの書式にまとめるかを決められるのは、その業務を回している部門です。引き受けるのは様式の数で、1つの書式で何でも出せる状態をやめる代わりに、選ぶ手間が戻ってきます。

気づかれるまでの時間を詰めるなら、通知先を増やしてリマインドの間隔を短くする。設定画面の中で完結します。ただし毎日届く通知は、届いた時点で読まれない側に回るという代償が付きます。

判断の時間を詰めるなら、承認者が見たい情報を申請画面に載せる。何を見たいかは承認者本人にしか分からないので、聞くところから始まります。引き受けるのはフォームの項目数で、申請者の入力が増えるぶん、書く時間の側が伸びます。

往復の時間を詰めるなら、入力チェックと記載例を足す。ここも設定の中で動かせます。チェックを厳しくするほど下書きのまま止まる件数が増えるので、申請のしにくさを引き受けることになります。

どの区間なら長くなってもいいかを先に決めておくと、迷いにくくなります。

通し例の担当者にとって、13日はひと続きでした。見積が1社分しか来ないまま週末をまたぎ、水曜に出せたと思ったら部長が出張。戻ってきて押された翌日に台数の根拠を聞かれ、書き足して出し直し、決裁が下りたのは翌週の木曜です。どこが遅かったかと聞かれれば、全部という答えになります。

手を打つ側から見ると、その全部は持ち主が分かれています。通知の設定を持っているのは情シス、書式の単位を決めるのは総務、何を見て押すかを決めているのは承認者。同じ13日でも、動かせる人がそれぞれ違います。

どの区間を今期の目標に置くかは、区間の太さを見たうえで、その区間を持っている部門が決めることになります。書く時間の5日を縮めるために様式を増やすかどうかは、その業務を持っている部門の側にしかない判断です。

4つの区間のうちひとつを詰めると別のものを引き受ける関係と、情シスだけで決められる区間かどうかを対応させた図

まとめ

承認が遅いという声と、管理画面の数字が合わない。そこから始まることが多い話です。

  • システムが出す承認日数は、申請ボタンが押された時刻から測っている
  • 下書きの扱い、差し戻し後の起点、暦日か営業日かで数字は動く。実際の1件と突き合わせれば見分けられる
  • 1件の待ち時間は、書く時間・気づかれるまでの時間・判断の時間・往復の時間の4つに分けて見る
  • 承認者が押していない時間として説明できるのは、このうち2つ
  • 段数を減らすと短くなるのは、気づかれるまでの時間と判断の時間が繰り返される回数。書く時間は変わらない
  • 情シスの側で決められるのは気づかれるまでと往復の2つ。残りの2つは業務を持つ部門との合意が要る
  • どの区間を詰めても、別の区間が伸びる側を引き受ける

数字が合わないときは、集計の仕様を調べる前に、実際の1件を4つに割ってみる。そこから話が進みます。

よくある質問

承認の催促は、どのくらいの間隔で送るのが適切ですか

間隔よりも、誰に送るかで分かれます。本人にだけ送り続けると、開かれないまま件数が積み上がることがあります。一定日数を過ぎたら上位者や管理部門にも見える形にするか、本人に留めるか。承認者の負荷をどこまで可視化してよいかという、企業ごとの判断です。

承認日数は、平均と中央値のどちらで見ますか

分布の形によって、向く数字が変わります。月末に集中する書式や、年に数件しか出ない書式では、極端に長い1件が平均を押し上げます。中央値は外れ値の影響を受けにくい一方、止まっている数件が見えなくなる弱点があります。平均と中央値の両方を出して、平均だけが大きく動いている書式を個別に見る使い方が現実的です。

差し戻しの回数は、遅さの指標として使えますか

往復の時間を見る指標としては使えますが、待ち時間の全体を表すものではありません。差し戻しがゼロでも、書く時間や気づかれるまでの時間が長ければ待たされます。逆に、差し戻しが多くても1回あたりの往復が短ければ、体感はそれほど伸びません。回数だけでなく、差し戻しから再申請までの日数を並べて見ると、申請者側で止まっているのか承認者側で止まっているのかを分けられます。

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