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ワークフローの保存期間は規程の年数だけでは決まらない

ワークフローの保存期間は規程の年数だけでは決まらない

ワークフローの保存期間は、規程の年数を設定に写せば済むのか

ワークフローの保存期間を何年にするか、という相談が管理部門から情シスに回ってくることがあります。文書管理規程には、稟議書は10年、契約関係は永久といった行が並びます。その年数を設定に写せば済む話に見えます。

ただし管理画面を開いても、年数を入れる欄が見つからないことがあります。保存期間という名前の設定そのものが、どこにも見当たらない。

規程の側が古いわけでも、製品の作りが足りないわけでもありません。数えている単位が違うだけです。規程は紙のキャビネットを前提に、文書1件を単位として年数を書いています。システムの側は、申請・添付ファイル・ユーザー・書式という別々の単位でデータを持っています。

保存期間を調べると、法令別の年数一覧が並びます。年数さえ決まれば管理できる、という前提で書かれたものが多くあります。電子化したあとに詰まるのは、年数が決まらないからではありません。決めた年数が、システムのどこまでを縛るのかが見えないからです。

本記事では、年数が届く範囲を単位ごとに並べます。棚卸しの依頼を受けたときに、どこから確かめるかの材料として使ってください。

ワークフローの保存期間は、何を基準に決めますか

規程の年数が起点になります。ただしシステムは申請・添付ファイル・ユーザー・書式の4つの単位でデータを持っていて、年数が当たるのは前の2つだけです。後ろの2つに年限はなく、代わりに消す判断が申請の側に握られます。

ワークフローの保存期間とは、申請が終わったあと、その申請データをシステム上に残しておく年数のことです。申請データには、本体・入力項目・承認履歴・コメント・添付ファイルが含まれます。終わったあと、と書いたのは、決裁された申請だけではないからです。否決も、取り下げも、差し戻されたまま止まったものも、データとしては同じように残ります。

そして、稟議書そのものを名指しして年数を定めた法律はありません。年数は法令の一覧ではなく、自社の文書管理規程の側にあります。

本記事では、次の状況を通し例として使います。従業員1,200名の企業で、ワークフローを5年運用していて、申請は累計で数万件。今年の4月、アカウントの棚卸しで、5年前に辞めた社員のアカウントを整理することになりました。その人は当時、購買稟議の2段目の承認者です。

この企業の文書管理規程には「稟議書 10年」と書かれています。5年前の申請は、まだ年限の中にあります。消すのはアカウントであって、申請ではありません。規程の側から見れば、何も消していない操作です。

システムの側から見ると、話が変わります。システムが持っているのは、次の4つです。

  1. 申請そのもの。本文・入力項目・承認履歴・コメント
  2. 添付ファイル。申請に紐づいて保管されている実体
  3. ユーザー。申請者・承認者として申請から参照されている
  4. ワークフローの定義。どの項目をどんな順番で通すかという書式

稟議書10年は、1つ目にそのままかかります。

添付は、扱い方で当たり先が変わります。申請の一部として扱うなら、申請の年限にそのまま従う。契約書のように別の文書として扱うなら、その文書自身の年限がかかります。どちらで扱っているかは、規程を持っている部門にしか分かりません。

下の2つに、年限はありません。人事マスタの話であり、設定の話だからです。代わりに、申請を読める状態で10年残すあいだ、そこから参照されているユーザーと書式は、消す判断が申請の側に握られます。

どこまで握られるかは、製品の作りで変わります。ログインだけを止める、新規の申請だけを止めるといった形で、消さずに運用を進められる余地も残ります。

規程の1行が書いているのは年数です。システムに落ちるのは、その年数のあいだ消せない範囲がどこまで広がるか、のほうです。

規程の年数が当たるのは申請と添付ファイルの2つで、ユーザーと書式は消す判断が申請の側に握られることを示した図

削除の相談は、どんなきっかけで来ますか

年限が明けたから来るわけではありません。手元が詰まってから来ます。きっかけは、アカウントの棚卸し、監査、容量や性能の3つです。

このうち監査は、消す話ではありません。残っていることを確かめる話です。年限の中にある申請を、求められた形で出せるかどうかを見ます。監査で何を聞かれるかは、ワークフローの監査対応。閲覧権限では答えられない質問で整理しています。

残る2つが、消す話です。ただし「消す」には3つの意味があって、どこまで戻せるかがそれぞれ違います。

一覧から外すのは、データを残したまま画面に出さない操作です。アーカイブ、非表示、検索条件の既定値の変更など、呼び方は製品によって変わります。必要になれば戻せます。

外に出したうえで消すのは、エクスポートしてから削除する操作です。CSVやPDFで書き出し、社内のストレージや文書管理システムに置いたうえで、システム側を消します。残るのは書き出した形のものだけです。承認履歴が1つのセルにまとまる、添付が別フォルダになる、といった形の変化が起きます。

そのまま消すのは、エクスポートを挟まない操作です。戻す先がありません。

消し方

軽くなるもの

戻せるか

一覧から外す

画面の見づらさ。検索のノイズ

戻せる

外に出して消す

件数。容量

書き出した形でなら戻せる

そのまま消す

件数。容量

戻せない

残る2つを、この3つに当てはめます。

アカウントの棚卸しは、申請を消す話ではありません。消したいのはユーザーで、年限がかかっていない側です。通し例の企業が4月に直面したのも、ここでした。多くの製品には、消さずにログインだけを止める無効化があります。

ストレージの上限だけは、別の行き先になります。一覧が重いという困り方は表示の設定で解けますが、容量のほうは一覧から外しても1バイトも減りません。消すか、保管先を増やすか、契約の容量を見直すかのどれかです。同じ「重い」でも、表示が重いのか容量が足りないのかで、打つ手が入れ替わります。

ここを分けずに相談を受けると、表示を直せば済むことのために、戻せない操作を検討することになります。

削除の相談が来る3つのきっかけのうち、戻せない操作に進むのは容量が足りないときだけであることを示した図

申請を残したままユーザーを消すと、履歴はどうなりますか

製品によって分かれます。承認者の名前がそのまま残る作り、削除済みの表示に変わる作り、その段ごと表示されなくなる作り。どれも仕様の範囲で、不具合ではありません。

通し例に戻ります。5年前に辞めた社員のアカウントを消したとき、その人が2段目で承認した購買稟議の履歴に何が残るか。名前が残る作りなら、規程の10年のあいだ、誰が押したかを読めます。削除済みと表示される作りなら、押した事実は残りますが、誰かは読めません。

退職者の整理について、削除ではなく無効化にすればよい、という答えだけでは足りません。無効化と削除の違いを説明できていても、無効化した状態で過去の履歴がどう見えるかまでは、その説明の中に入っていないためです。

確かめ方は、テスト用のアカウントを1つ作って、申請を1件通してから消してみることです。設定の説明文ではなく、消した後の履歴画面に何が並ぶかを見ます。サンドボックスや検証環境が使える製品なら、本番を触らずに、無効化と削除の違いまで同じ場で見られます。

  • 無効化:ログインできなくなるが、データとしては残る。過去の申請からも参照できる
  • 削除:ユーザーの実体が消える。過去の申請からの参照がどうなるかは製品ごとに違う

ID課金の製品では、無効化したアカウントが人数に含まれるかどうかも判断に関わります。含まれないなら、削除する理由が1つ減ります。人数の数え方はワークフローシステムの利用人数は、4つの層に分けて数えるで扱いました。

進行中の申請が残っている状態で消すと、別のことが起きます。承認待ちの段に誰もいなくなり、その申請だけが止まる。ただし通し例のように退職から5年経っていれば、この件数はほぼ残っていません。多いのは退職直後の整理のときです。

書式と添付ファイルは、申請と一緒に消えますか

書式も添付ファイルも、製品によって変わります。過去の申請が書式を参照し続ける作りなら、書式を消すと過去の申請の表示が崩れることがあります。添付は、申請と一緒に消える製品と、別の保管領域に残る製品があります。

使わなくなった書式の整理は、棚卸しの中でよく出てきます。通し例の企業にも、3年前に廃止した申請書の定義が管理画面に残っています。

消す前に見るのは、その書式で過去に出た申請が何件残っているかです。1件でも年限の中にあるなら、書式を消す判断は先送りになります。多くの製品には、書式を消さずに新規申請だけを止める設定があります。名前は停止・無効・公開終了などさまざまですが、やっていることは同じです。

テスト用の書式を1つ作り、申請を1件通してから書式を消す。そのあとで、通した申請が開けるかを見ます。開けるなら、書式の整理は申請と切り離して進められます。開けないなら、年限が明けるまで停止で止めておく判断になります。

添付ファイルのほうは、逆向きの事故が起きます。申請は残っているのに、開くと中身が無い。ストレージの容量を空けるために添付だけを整理したときや、外部ストレージ連携の設定を変えたときに起きます。

確かめ方は、過去の申請を1件開いて添付のリンクを踏むことです。外部ストレージと連携している場合は、連携先のフォルダが申請単位で切られているのか日付単位で切られているのかも見ておきます。日付単位なら、古いフォルダをまとめて片づけた瞬間に、年限の中の申請から中身が抜けます。

稟議の証跡として意味を持つのは、申請本体よりも添付のほうであることが少なくありません。見積書、仕様書、稟議の根拠になった資料。本体だけが残っていても、金額の根拠は読み取れません。証憑の位置づけは証憑とは?意味・種類・保存期間・電子化のポイントまでわかりやすく解説!で扱っています。

弱点には、設定で軽くなるものと、消した時点で取り返しがつかないものがあります。

  • 設定で軽くなるもの:一覧の重さ、検索のノイズ、使わない書式が管理画面に並ぶこと
  • 取り返しがつかないもの:消した申請そのもの、消したユーザーから参照されていた履歴の表示、消した添付ファイル。設定を戻しても、消えた分が生えてくるわけではありません

消す前に、社内とベンダーへ何を聞いておきますか

聞く相手は2つです。規程と業務の側に聞くことと、製品の仕様として確かめること。混ぜて聞くと、どちらにも答えられない質問になります。

社内に聞くことは、規程と運用の実態に関わるものです。

  1. 文書管理規程で、稟議書に当たる文書の年限を何年と定めているか
  2. その年限の起点はいつか。決裁日か、契約の終了日か、会計年度の末日か
  3. 契約に紐づく申請は、契約書側の年限に合わせるのか、稟議書側の年限のままか
  4. 否決・取り下げで終わった申請にも、同じ年限を当てるのか
  5. 添付ファイルは、申請の一部として扱うのか、別の文書として扱うのか
  6. 税務調査や監査で提出を求められたとき、誰がどの画面から出す想定か

ベンダーに確かめることは、仕様として答えが決まっているものです。

  1. ユーザーを削除したとき、過去の申請の承認履歴に何が表示されるか
  2. 無効化したユーザーは、ID課金の人数に含まれるか
  3. 書式を削除したとき、その書式で出た過去の申請は開けるか
  4. 申請を一括で削除する手段があるか。ある場合、単位は何か
  5. エクスポートに含まれる範囲はどこまでか。承認履歴・コメント・添付は入るか
  6. 削除の操作そのものが、操作ログに残るか

最後の1つは見落とされやすいところです。消した記録が残らないと、なぜ無いのかを後から説明できません。

この2つを突き合わせると、消せるもの、消さずに軽くできるもの、年限が明けるまで触れないものの3つに仕分けできます。通し例の企業なら、退職者のアカウントは3つ目に入ります。購買稟議の本体と添付は年限の中、その申請を参照している書式も動かせない。重い一覧のほうは、表示の設定で片づきます。4月に始まった棚卸しは、消す作業ではなく、消さない範囲を確定する作業だったことになります。ここまでは、規程の文面と設定画面で確かめられる範囲です。

仕分けできないのは、年限が明けた申請を実際に消すかどうかのほうです。規程が10年と定めていて、11年目に入った申請がある。消してよい状態ではありますが、消さなければならない状態でもありません。残し続けても構わないのか、個人情報を含む以上は年限で消すべきなのか。ここは、その企業が何を抱えているかで変わります。年限が明けた申請をどうするかは、規程を持っている部門にしか決められない領域です。

まとめ

ワークフローの保存期間は、規程の年数を設定に写す作業ではありません。その年数がどこまでを縛るかを決める作業です。

  • 規程が年数を当てるのは、申請と添付ファイル。ユーザーと書式に年限はない
  • 添付の当たり先は扱い方で変わる。申請の一部か、契約書のような別の文書か
  • 代わりに、申請を読める状態で残すあいだ、そこから参照されるユーザーと書式は、消す判断が申請の側に握られる
  • 削除の相談は3つのきっかけから来る。棚卸し、監査、容量
  • 棚卸しと表示の重さは、消さずに解ける場合がある。戻せない操作まで進むのは容量が足りないときだけ
  • ユーザーを削除したときに履歴へ何が残るかは製品ごとに違う。テスト用アカウントを1件通して確かめられる
  • 書式も同じ形で確かめられる。テスト用の書式を作り、申請を通してから消して開き直す
  • 添付が消えると、申請は残っても金額の根拠が読めなくなる
  • 聞く先は社内とベンダーで別。混ぜると、どちらにも答えられない質問になる

棚卸しの依頼を受けたら、対象者が過去の履歴にどう残るかを、テスト用アカウント1件で先に確かめる。そのうえで、退職直後の整理なら、進行中の申請に承認者として入っていないかを見る。ここが入口です。

よくある質問

稟議書の保存期間は、法律で何年と決まっていますか

稟議書そのものを名指しして年数を定めた法律はありません。実務では、取引に関して作成した書類として税務上の保存年限に合わせる企業と、文書管理規程で独自に年数を定める企業があります。自社の年限は、法令の一覧ではなく文書管理規程を見ると確認できます。規程の年限が法定の年限より長い場合は、長いほうが自社の基準になります。

退職者のアカウントは、削除と無効化のどちらにしますか

過去の申請から参照されているアカウントは、無効化を選ぶ企業が多くなります。削除したときに履歴の表示がどう変わるかが、製品ごとに違うためです。ただし無効化したアカウントがID課金の人数に含まれる製品では、費用との兼ね合いになります。含まれるかどうかを先に確かめると、判断の材料が1つ増えます。

申請データをエクスポートしておけば、システム側は消してよいですか

書き出した形で年限の要求を満たせるかどうかで決まります。承認履歴が1つのセルにまとまる、添付が別フォルダになるなど、書き出すと形が変わるためです。監査や税務調査で求められるのが、誰がいつ承認したかを追える状態なのか、申請書の内容そのものなのかによって、必要な形が変わります。エクスポートの範囲は、消す段階ではなく規程を確認する段階で見ておく論点です。

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