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決裁権限規程の改定、施行日をまたいだ稟議で権限外の決裁が出る条件

規程の施行日をまたいだ稟議は、どちらの基準で決裁されるのか

本記事は連載「ワークフロー検討の現場から〜そのお悩みにお答えします〜」の第22回です。本連載は、ワークフローシステム「kickflow」の商談において検討中の企業から実際に寄せられた質問を起点に、製品選定の現場で繰り返し議論になるテーマを整理するものです。特定製品の優劣ではなく、判断の考え方そのものを扱います。第22回のテーマは、決裁権限規程の改定と、施行日をまたいだ稟議の扱いです。

決裁権限規程の改定が10月1日に施行された。設備投資の部長決裁の上限は、300万円から500万円に上がっています。

ワークフローの金額分岐は前夜に書き換えましたが、承認待ちには改定前の経路のまま施行日をまたいだ稟議が残っています。このまま決裁が付くと、権限外の決裁になるものがあるかもしれません。

施行日の前後には、どちらの基準で決裁したことになるのかという問いが、総務と情シスのあいだを何度か往復します。

規程の附則には施行日だけが書かれ、途中の案件の扱いまでは書かれていない改定もあります。一方でワークフローは、設定された条件で経路を組みます。規程を書く側もシステムを動かす側も、それぞれ正しく動いています。噛み合わないのは、施行日をまたいだ1件をどちらが引き受けるのか、決めごとがないためです。

よく聞くのは、起案日か決裁日かどちらかに決めておけばよい、という答えです。間違ってはいません。ただし、どちらに決めても、権限外の決裁は別のところから出てきます。進んでいる経路と、当てると決めた基準がずれたところです。

本記事では、そのずれがどこで生じるかを、改定の向きと基準日の組み合わせで整理します。施行日の前にどの稟議を見るかを決めるときの、たたき台として使ってください。

施行日をまたいだ稟議は、どちらの基準で決裁されたことになりますか

附則に経過措置があれば、それに従います。書かれていなければ、起案した日の規程で見る読み方と、決裁した日の規程で見る読み方があり、どちらを採るかは規程を持つ部門が決めます。システムの側では決められません。

決裁権限規程の経過措置とは、改定の施行日をまたいだ案件に、新旧どちらの基準を当てるかを定めた取り決めです。附則に「施行日前に起案されたものは、なお従前の例による」と書く形が典型です。

本記事では、次の1件を通し例として使います。製造部から上がってきた検査装置の更新稟議で、金額は450万円。9月28日に起案されました。

改定前は300万円を超えると本部長決裁なので、経路は課長、部長、本部長の3段です。9月29日に課長が承認し、10月1日の朝は部長の段で止まっています。改定後は500万円までが部長決裁なので、新しい基準ならこの稟議は部長で完結します。

経路を申請の時点で組む製品では、施行日に金額分岐を書き換えても、9月28日に組まれた3段はそのまま残ります。分岐や承認者をいつ確定するかは製品で分かれ、その違いはワークフローの組織変更、当日に残る作業は2つに分かれるで整理しました。

途中の稟議で権限外の決裁が出るのは、どんなときですか

進んでいる経路が、当てると決めた基準より軽いか、別の決裁者に向いているときです。決裁日の基準で読むなら、権限を絞る改定や決裁者を付け替える改定で起きます。起案日の基準で読むなら、途中で経路が組み直された稟議で起きます。

決裁日の基準で読む場合

部長決裁は、本来は社長が持つ決裁の権限を、金額の範囲を区切って部長に委ねた専決の形です。上位者は下位者の専決事項も決裁できる、という通則を置いている規程なら、委ねる範囲を広げても上位者の決裁は権限の内側に残ります。

検査装置の稟議では、10月2日に部長が承認し、本部長の段へ進みます。新しい基準なら部長で終わっていたはずの1件が、本部長の決裁を経て完了します。失うのは本部長の段にかかった日数です。

改定が逆向きで、部長決裁の上限が500万円から300万円に下がる場合は、結果が変わります。9月28日の起案時点では部長決裁なので、経路は課長と部長の2段です。10月2日に部長が承認した時点で、決裁が成立します。その日の部長が決裁できるのは300万円までです。

画面の上では何も止まらず、発注も進みます。気づいたときには、取り消すか、本部長があとから追認するかを選ぶことになります。どちらを選んでも、権限の外で付いた決裁は記録から消えません。

起案日の基準で読む場合

経過措置を書いて起案日の基準で読むなら、旧い経路のまま進む稟議は、どちらの向きの改定でも規程どおりです。ずれが出るのは、途中で経路が新しい基準の側へ組み直されたときです。

検査装置の稟議で、組み直しが起きる場面は3つあります。

  1. 差し戻して再申請したとき:再申請の時点で分岐を評価し直す製品では、新しい金額分岐が当たり、経路が課長と部長の2段になる。起案日の基準では、部長の上限は300万円のまま
  2. 管理者が段を外したとき:急ぐからと本部長の段を外すと、同じく部長の決裁で終わる
  3. 書き換えのあとに起案されたとき:分岐を9月30日の夜に書き換えると、その夜に起案された稟議は起案日が9月30日のまま新しい経路に乗る

広げる改定でも、この3つでは権限外の決裁が出ます。反対に、絞る改定で組み直しが起きても、経路が重くなるだけで権限の外には出ません。

権限外の決裁は、改定の向きだけでは決まらず、進んでいる経路と当てる基準のずれから出ます。経路が基準より重い側にずれれば、起きるのは遅れで、あとから手を打てます。軽い側や別の決裁者の側にずれれば権限外の決裁が付き、付いたあとでは元に戻せません。

上限を引き上げる改定なら、施行日をまたいでも上位者が決裁するので困らない、という読み方があります。これが当てはまるのは、上位者が下位者の専決事項も決裁できる通則を置いた規程で、かつ金額の上限を動かす行に限られます。合議の相手を足す改定では成り立ちません。合議を通らずに決裁された稟議は、誰も手順を外れていなくても規程どおりとは言えない状態になります。

決裁権限規程の1行は、ワークフローの4か所に分かれるでは、決裁日の版で通すなら差し戻しか作り直しが要ると書きました。経路が軽い側にずれる、絞る改定の行がそれに当たります。広げる改定の行は、通則のある規程なら上位者の決裁で足ります。起案日の版ならそのまま流してよいと書いたほうにも、経路を組み直さない限り、という条件が付きます。

改定のどの行で、経路と基準がずれますか

決裁日の基準なら、絞る行と付け替えの行です。起案日の基準なら、広げる行と付け替えの行に当たる稟議のうち、経路が組み直されたものです。1回の改定には両方の向きが混じることが多いため、改定通知の行ごとに向きを付けると、施行日の前に見る範囲が決まります。

改定の種類

向き

決裁日の基準で読むと

起案日の基準で読むと

金額の上限を引き上げる

広げる

上位者の段を通って決裁される。遅れるだけ

経路を組み直した稟議で権限外の決裁が出る

金額の上限を引き下げる

絞る

権限を持たなくなった人の決裁が付く

旧い経路のままなら規程どおり

合議の相手を足す

絞る

合議を経ない決裁が付く

旧い経路のままなら規程どおり

合議の相手を外す

広げる

不要になった合議を通る。遅れるだけ

経路を組み直した稟議で合議が抜ける

決裁者を別の系統に付け替える

向きで分けられない

旧い系統の決裁者は権限を持たない

組み直した稟議では新しい系統の決裁者が権限を持たない

後閲の相手を足す

絞るが決裁の効力には関わらない

決裁は有効。後閲は施行日のあとから回せる

同左

付け替えは、例えば設備投資の決裁を事業本部長から管理本部長へ移すような改定です。上下ではなく横に動くため、どちらの基準日で読んでも、経路と基準が噛み合わない稟議が出ます。後閲は決裁のあとに回る手続きなので、足す改定でも決裁の有効性には触れません。

施行日の前に確かめる稟議は、決裁日の基準なら、絞る行と付け替えの行に当たる承認途中のものです。起案日の基準なら、広げる行と付け替えの行に当たる稟議のうち、書き換えから施行日までに起案されたものと、施行日のあとに差し戻しや段の変更が起こりうるものです。検査装置の稟議は、決裁日の基準では見なくてよく、起案日の基準では再申請に備えて見ておく1件になります。

施行日の前に、何を決めておきますか

取れる形は3つあり、組み合わせて使われることもあります。どれを選ぶかで、引き受けるものが違います。

取る形

途中の稟議の扱い

引き受けるもの

附則に経過措置を書き、起案日の基準で読む

旧い経路のまま進めて規程どおり

起案日の定義。組み直しを起こす操作の管理

決裁日の基準で読み、ずれる稟議を施行日前に止める

取り下げて新しい経路で出し直す

申請者の手戻り。出し直しは分岐の書き換えのあとになる

基準日を施行日より前に置く

ある日以降の起案は新しい基準の経路で回す

附則に基準日を書き、前倒しの適用を決議しておくこと。基準日より前の起案は施行日をまたぐ

1つ目で詰めておきたいのが、起案日の定義です。再申請で経路を組み直す製品では、画面に出る申請日も再申請の日に変わることがあります。検査装置の稟議が10月5日に差し戻され、翌日に再申請されたとします。附則が「施行日前に起案されたもの」としか書いていないと、この1件の起案日が9月28日なのか10月6日なのかは、記録からは読めません。初回の申請日で数えるのか、最後の申請日で数えるのかまで決めておくと、迷う稟議が出ません。

2つ目は、出し直しの時刻に注意が要ります。分岐を書き換える前に出し直すと、同じ旧い経路が組まれるだけです。

3つ目は、基準日から施行日までの起案を新しい経路に乗せる形です。附則に書かないまま広げる行に使うと、施行日前に新しい経路で付いた決裁は、旧い規程のもとで権限外になります。附則に書かない運用なら、絞る行に限って使う形になります。

あいだを取る形もあります。附則の経過措置を改定の行ごとに書き分けて、絞る行だけ決裁日の基準にする。施行日の前日までに決裁を終えるよう、該当する稟議を急がせる。管理者が承認途中の稟議に段を足せる製品なら、出し直さずに経路を重くする。どれも、規程の読み方と揃えたうえでの話です。

分岐を書き換える時刻も、基準日と揃えておきます。起案日の基準で読むなら、書き換えは施行日になってから行うか、切り替えを日付で予約できる製品なら施行日に合わせて予約しておくと、前夜の起案が新しい経路に乗ることはありません。

絞る改定の内容が施行日より前に社内へ伝わると、駆け込みの起票も起きます。起案日の基準なら施行日前の起案が、決裁日の基準なら施行日前の決裁が寄ってきます。

選んだ基準は、どこに記録しますか

施行日をまたいだ稟議ごとに、当てた基準として記録に残します。後日の監査では、その決裁が当時の規程で正しかったかを問われるためです。

残す先は、改定の版数と施行日、またぎで適用した基準を並べた管理台帳です。稟議番号と突き合わせられる形にしておくと、監査で1件を抜かれたときに、その稟議にどちらの基準を当てたのかを示せます。

組織変更が同じ日に重なる場合は、旧い経路の承認者も同じ一覧に並べておきます。名義と権限のどちらが動いたのかを切り分けられるためです。

なお、経過措置をどう書くかは、規程を持つ部門と、改定を決議した機関の判断です。選んだ基準を製品の上でどう再現できるか、どの操作で経路が組み直されるかは設定から確かめられますが、どちらの基準を採るかは規程の側で決まります。

まとめ

施行日をまたいだ稟議で権限外の決裁が出るかどうかは、改定の向きと基準日の組み合わせで決まります。

  • 決裁権限規程の経過措置とは、施行日をまたいだ案件に新旧どちらの基準を当てるかの取り決め。附則に書かれていない改定もある
  • 経路を申請の時点で組む製品では、施行日に分岐を書き換えても、途中の稟議は旧い経路のまま進む
  • 権限外の決裁が出るのは、進んでいる経路が当てる基準より軽いか、別の決裁者に向いているとき。重い側のずれは遅れで済み、あとから手を打てる
  • 決裁日の基準で読むなら、絞る行と付け替えの行でずれる。起案日の基準で読むなら、再申請・段の削除・書き換え後の起案で経路が組み直された稟議でずれる
  • 改定通知の行に向きを付け、基準日に合わせて施行日の前に見る稟議を絞る
  • 起案日の基準なら起案日の定義と書き換えの時刻まで、基準日を前に置くなら附則への記載まで決める

よくある質問

施行日をまたいで付いた決裁は、上位者の追認で足りますか

追認で埋めている企業もあります。ただし追認は元の決裁日を動かさないため、記録の上では権限外の決裁と追認の2つが並びます。追認で足りるとするかは、規程を持つ部門と監査の見方で分かれます。件数の見込みによって、追認で埋めるか施行日前に止めるかの選び方も変わります。

決裁済みの稟議を施行日のあとに増額するときは、どちらの基準ですか

変更の稟議を新しい起案として扱うか、元の稟議の続きとして扱うかで分かれます。新しい起案なら新しい基準、続きなら元の稟議と同じ基準です。どちらで扱うかは、経過措置で起案日を定義するときに一緒に決めておくと、施行日のあとで迷いません。

規程の改定と組織変更が同じ日に重なるときは、何に気をつけますか

組織変更では経路が指す席の中身が入れ替わり、規程の改定ではその席の権限が変わります。同じ日に重なると、施行日をまたいだ稟議では承認者の名義と権限の両方が動きます。席の中身の側の準備は、組織変更の段取りとして別に進めることになります。

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