役職を足すと動く承認経路。担当部長をどこに置くか
役職を1つ追加すると、承認経路はなぜ動くのか
担当部長という役職が増えると、ワークフローの承認経路が動くことがあります。役職を参照して組んだ経路ほど、その影響を受けます。
ただし、人事制度の改定で4月から新設されるという連絡が届いた時点では、そうは見えません。ワークフローは人事システムと連携しているので、新しい役職コードは役職マスタに自動で入ってきます。経路の設定は、誰も触りません。経路を1本も変えていない以上、影響はないと考えるのは自然です。
ところが人事の並び順まで連携で取り込む設定だと、4月の第1週に、設備保全部の稟議が担当部長の画面に届いたという問い合わせが入ることがあります。
人事も情シスも、それぞれ正しく動いています。人事は処遇の制度に合わせて呼称を増やし、ワークフローはその呼称を受け取って、書かれたとおりに承認者を引いている。ずれているのは、人事の役職欄に入っているものと、承認経路が役職に期待しているものです。
役職参照で組んでおけば人事異動に強い、という話はよく知られています。異動には強くなります。ただし、役職の種類そのものが増えることには、同じようには強くありません。
本記事では、人事から次に役職の連絡が来たとき、どの経路を開けばよいかを、役職の中身と経路の書き方の組み合わせで絞ります。
役職を追加すると、承認経路にどう影響しますか
影響が出るかどうかは、新しい役職の名前ではなく、経路が役職をどう参照しているかで決まります。名前か組織の長で指している経路は動きにくく、序列で指している経路は、新しい役職が序列のどこに入るかしだいで動きます。
ワークフローの役職マスタとは、承認経路が承認者を探すときに手がかりにする役職の一覧と、その並び順のことです。多くの製品では、人事システムの役職を取り込んで作ります。
本記事では、次の1件を通し例として使います。従業員1,500名の製造業で、設備保全部から予備部品の購入稟議が上がってきた。金額は150万円。決裁権限規程では、100万円以上500万円未満の購買は部長決裁です。経路は保全第一課長、設備保全部長の2段で組んであります。
4月から、この部に担当部長が1名置かれます。前年まで保全第一課長だった人が、専門職のコースに移って部長級の処遇になりました。所属は部の直下で、部下はいません。
この1名の追加で経路が動くかどうかは、部長の段の書き方しだいです。
経路の書き方 | 担当部長が増えたときの動き |
|---|---|
役職の名前で指す(所属部の「部長」) | 動かない。担当部長は「部長」と別の役職として扱われる |
役職の序列で指す(所属部の「部長以上」) | 担当部長が序列のどこに入るかで動く |
組織の長で指す(所属部の所属長) | 動かない。ただし所属長を役職から自動で決める連携なら、序列と同じ問題が戻る |
序列で指す書き方は、「部長以上」「課長級以上」のように範囲で書けるぶん、経路の本数を減らせます。その範囲の中に新しい役職が入ってくると、経路は何も変えないまま承認者の顔ぶれが変わります。
新しい役職が序列のどこに入るかは、連携の作りによって次のどれかになります。
- 人事の並び順ごと取り込む作り:担当部長は人事の等級どおり、部長の隣に入ります。発令後の最初の申請で、部長の段に担当部長も当たります
- 新しいコードを末尾に足す作り:担当部長は一般社員より下の扱いになります。承認者としては引かれませんが、担当部長が申請したときの分岐が変わります
- 序列なしで入る作り:序列で指した条件のどれにも当たりません。承認者にはならず、申請者としては製品の既定の扱いになります。最下位として扱う作りもあれば、分岐の条件に当たらずエラーになる作りもあります
組織図は変わっていないため、組織変更のときのような作業の予定にも乗りません。
担当部長を序列のどこに置くと、何が起きますか
置ける位置は、部長より上、同列、下、それに序列の外の4つです。上か同列なら承認者として引かれ、同列か下なら担当部長が申請したときの経路が変わります。いちばん起きやすい同列では、両方が同時に動きます。
置き場所 | 承認者として | 申請者として |
|---|---|---|
部長より上 | 部長の段で担当部長が先に当たりうる | 部長を上位として扱わず、本部長から始まる |
部長と同列 | 部長の段に部長と担当部長の2人が当たる | 部長を上位として扱わず、本部長から始まる |
部長より下 | 引かれない | 課長級以下の申請と同じ分岐に乗る |
序列の外(決裁上の職位なし) | 引かれない | 申請者の役職で分岐する条件では、製品の既定の扱いになる |
人事の等級をそのまま取り込むと、担当部長は同列に入ります。処遇の上では部長級だからです。決裁上の扱いで置くなら、行き先は序列の外になります。
このとき150万円の稟議の部長の段では、設備保全部長と担当部長の2人が条件に当たります。製品によって、どちらか1人が承認すれば進む、2人とも承認が要る、どちらかに決まらずエラーになる、のいずれかの動きになります。
どちらか1人で進む作りなら、担当部長が押した時点で決裁が付きます。担当部長は規程上、購買の決裁権を持っていません。それでも履歴には、部長の段の承認として残ります。
申請者の側で効くのは、「申請者より上位の役職者から始める」「管理職の申請は1段目を飛ばす」といった、申請者の役職で分岐する条件です。担当部長が研修の参加を申請すると、同列に置いた場合は部長が上位として扱われず、部長の段を飛ばして本部長に届きます。下に置いた場合は、部下のいる管理職ではないのに、一般社員と同じ分岐に乗ります。
人事の役職欄には、何種類の役職が並んでいますか
性格の違う3種類が1つの列に並んでいます。決裁のライン上のポスト、ラインを補佐するポスト、処遇上の呼称です。承認経路が役職に期待しているのは、1つ目だけです。
種類 | 例 | 組織の長か | 規程上の決裁権 |
|---|---|---|---|
ライン上のポスト | 部長、課長 | 長である | 持つ |
ラインを補佐するポスト | 副部長、部長代理、次長 | 長ではない | 規程で代決者と定められていれば、不在時に持つ |
処遇上の呼称 | 担当部長、専任部長、専門職の呼称 | 長ではない | 原則として持たない |
人事システムが役職を持つ目的は、処遇と発令の管理です。誰がどの等級で、どの呼称で辞令を受けたか。その目的には、3種類を1つの列に入れておくのが自然です。
ワークフローの側が役職に聞きたいのは、別のことです。この申請を、規程上だれが決裁するのか。答えを持っているのは1つ目だけで、2つ目は条件付き、3つ目は原則として持っていません。
1つの列に並んでいるので、序列を付けると3種類が1本の並びに収まってしまいます。序列で組んだ経路が役職の追加で揺れるのは、この1本の並びが処遇と決裁の両方を背負っているためです。
経路の設計で役職の並び順を人事の等級表からそのまま起こすと、担当部長と部長が同じ行に並びます。等級表としては正しく、決裁の序列としては正しくありません。起こす前に、3種類のどれに当たるかで仕分けておく必要があります。
2つ目の補佐のポストは、扱いが一段込み入ります。部長代理が規程上の代決者として定められているなら、部長の不在時にだけ決裁の段に入ります。常に経路に入れるのではなく、不在のときの扱いとして別に持つ形です。不在時の承認を誰に回すかは、代理承認の設定は、本人だけに持たせて足りるかで扱っています。
担当部長は、承認者に入れるべきですか
入れるか入れないかの二択ではありません。担当部長にどの申請の決裁を委ねているかで、入る経路と入らない経路が分かれます。
担当部長が決裁権を持たない呼称なら、どの経路にも入らないのが規程どおりです。
一方で、担当部長に特定の分野だけ決裁を委ねている企業もあります。通し例の企業で、保全の外注工事に限っては担当部長の決裁とする、と規程に書かれていたとします。この場合、担当部長は外注工事の稟議にだけ入り、予備部品の購買には入りません。
担当部長の置き場所を決めるのは、序列の位置ではなく規程の行です。決裁権限規程のどの行に担当部長が出てくるかで、入る経路が決まります。規程の1行がワークフローのどこに落ちるかは、決裁権限規程の1行は、ワークフローの4か所に分かれるで整理しました。
特定の分野だけを委ねる形なら、序列で入れるのは難しくなります。序列は、どの申請にも同じように効くからです。外注工事の経路でだけ担当部長を名前で指すか、担当部長が所属するチームを作ってそこに割り当てるか、のどちらかになります。役割の単位でチームを立てる考え方は、承認経路のメンテが終わらない理由で扱っています。
役職の追加に備える組み方は、何通りありますか
取れる形は3つです。どれを選んでも、引き受けるものが残ります。
形 | 役職が増えたときの動き | 引き受けるもの |
|---|---|---|
経路を役職の名前か組織の長で指す | 経路は動かない | 「部長以上」でまとめていた経路が名前の列挙になり、条件が増える。ライン上のポストが新設されたときに、経路へ足し忘れる |
ワークフロー側に決裁用の序列を別に持ち、人事の役職と対応させる | 対応表に1行足せば済む | 対応表を誰が保つかを決める必要がある。対応表に無い役職が連携で来たときの動きを確かめておく |
人事の序列をそのまま使い、新しい役職の置き場所をその都度決める | 置き場所しだいで、どこかの経路が動く | 役職を足すたびに、承認者として引かれる経路と、申請者として分岐が変わる経路の両方を洗う作業が残る |
2つ目は、処遇と決裁を別の並びに分ける形です。置き場所の表の4行目にあたる序列の外を、対応表で意図して作ることになります。人事から担当部長が来ても、決裁上の職位なしと置けば、どの経路にも入りません。
3つ目の手間は、役職が増える頻度に比例します。人事制度の改定が数年に1度なら、その都度の洗い出しで回る企業もあります。
弱点は、目立つかどうかと直せるかどうかが重なっています。承認者が引かれずに止まる申請は目立ち、経路を直して流し直せます。権限を持たない人の承認で付いた決裁は、誰も気づかないまま記録として残ります。経路を直しても、付いた決裁は書き換わりません。
段を飛ばして本部長が決裁した申請は、その中間にあります。規程が上位者による決裁を有効と認めていれば問題になりません。認めていない場合に限り、直せない側に入ります。
役職を追加する前に、何を確かめますか
聞く相手は、人事・規程の管理者と、ワークフローの管理者の2つです。
人事と規程の管理者に確かめること
- 新しい役職は、3種類のどれに当たるか。組織の長として発令されるのか、呼称として付くのか
- 新しい役職に、決裁権限規程のどこかの行で決裁を委ねているか。委ねているなら、どの分野のどの金額区分か
- 補佐のポストなら、規程上の代決者として定められているか
- 上位者が下位の決裁権者に代わって決裁することを、規程が認めているか
ワークフローの設定と仕様で確かめること
- 役職を参照している経路は、名前で指しているか、序列で指しているか、組織の長で指しているか
- 申請者の役職で分岐する条件を持つ経路は、どの書式にあるか
- 人事連携で新しい役職コードが来たとき、序列のどこに入るか。並び順ごとか、末尾か、序列なしか
- 1つの段に複数の人が当たったとき、どちらか1人で進むか、全員が要るか、エラーになるか
通し例の企業なら、1つ目の答えは処遇上の呼称で、2つ目の答えは外注工事に限った委任です。この2つが分かれば、担当部長が入る経路は外注工事の1本に絞れます。
7つ目は、手で役職を足しても確かめられません。連携の検証環境を使うか、発令前に人事側からテスト用のコードを1つ流してもらい、ワークフローのどこに入るかを見ます。8つ目は、テスト用の役職を2人に付けてテスト申請を1件通せば分かります。どちらも発令日の前に済ませておけば、4月の第1週の問い合わせを待たずに済みます。
なお、新しい役職が3種類のどれに当たるか、担当部長にどこまで決裁を委ねるかは、人事制度と規程の設計そのものです。その答えが承認経路のどこに効くかは設定から確かめられますが、担当部長を承認者にするかどうかは、人事と規程を持つ側でしか決められません。
まとめ
序列で組んだ承認経路が役職の追加で動くのは、人事の役職欄が処遇と決裁の両方を1本の並びで背負っているためです。
- 影響が出るかは、経路が役職を名前で指すか、序列で指すか、組織の長で指すかで決まる
- 新しい役職が序列のどこに入るかは連携の作りしだい。並び順ごと、末尾、序列なしのどれか
- 部長の上か同列なら承認者として引かれ、同列か下なら申請者としての分岐が変わる。人事の等級どおりの同列では両方が動く。引かれも分岐も変えないのは序列の外だけ
- 人事の役職欄には、ライン上のポスト・補佐のポスト・処遇上の呼称の3種類が並んでいる。承認経路が役職に期待しているのはライン上のポストだけ
- 担当部長を承認者に入れるかは二択ではない。規程のどの行に担当部長が出てくるかで、入る経路が決まる
- 役職の追加に備える組み方は、名前か組織の長で指す、決裁用の序列を別に持つ、置き場所をその都度決める、の3つ。3つ目は役職を足すたびに洗い出しが残る
- 止まる申請は後から直せるが、権限のない人の承認で付いた決裁は記録として残る
担当部長の置き場所は、序列の中ではなく、決裁権限規程の行の中にあります。人事から新しい役職の連絡が来たら、経路を開く前に、その役職が3種類のどれに当たるかを人事と規程の管理者に確かめる。そこから、見るべき経路が決まります。
よくある質問
人事システムとの連携で、新しい役職が自動で入ってくるのを止められますか
連携の設定しだいです。役職マスタを連携の対象から外せる製品もあれば、ユーザーの役職と一緒に必ず同期される製品もあります。止められない場合は、新しい役職コードが序列のどこに入るかを確かめ、発令日より前に決裁上の置き場所を決めておく形になります。
部長代理や次長は、承認経路に入れますか
規程上の代決者として定められているかで分かれます。定められていれば、部長の不在時にだけ決裁の段に入る扱いが規程に沿います。常に経路の段として置くと、部長と部長代理の2段が並び、同じ観点で2回見る経路になりがちです。
役職の序列は、人事とワークフローのどちらで管理しますか
処遇の序列は人事、決裁の序列はワークフローの側で持つと、役職の追加に振り回されにくくなります。ただし2つの並びを持つと、対応表を保つ手間が増えます。役職が増える頻度と、序列の範囲で書いている経路の本数を比べて決めることになります。