手順書の承認履歴とPDFをつなぐ方法は照合する人で選ぶ
こんにちは。シンプルなのに多機能で圧倒的に使いやすい、クラウドワークフロー「kickflow」のメディア運営チームです。
「手順書の承認履歴はワークフローに残っている。でも、共有フォルダのPDFがその承認を受けた版だと、どう示せばいいのか」
内部監査を前にした文書事務局で、こうした声が出ることは珍しくありません。
承認の記録はワークフローの中に、配ったPDFは共有フォルダにあり、両者を結ぶ記録がどこにもないためです。
両者を対応づける方法はいくつかあります。
一方で、すべての文書に厳密な対応づけを用意すると、改訂のたびの手間が増えます。
そこで今回は、承認履歴とPDFをつなぐ4つの方法と、照合する人ごとにどこまで用意すれば足りるかを解説します。
この記事の要点
- 承認日や承認欄を承認のあとで書き込むと、承認した添付と配るPDFは別のファイルになります。問われるのは、その差分を誰が何で加えたかを説明できるかです
- 説明の仕方は、承認後に手を加えない運用と、人が書き込んで見比べた記録を残す運用の2つです。手を加えない運用では、承認者と承認日時をPDFの隣に置く承認記録の帳票に載せます
- 承認とファイルをつなぐ方法は4つあり、ダウンロードや印刷のあとも付いていくかどうかが違います
- 照合する人は現場の読み手、文書事務局、監査や取引先の3者で、足りる方法が違います
承認履歴と配布したPDFが離れる仕組み
今の発行の手順のままでは、承認したファイルと共有フォルダのPDFは同じファイルになりません。
例えば、品質保証部が管理する受入検査手順書を、第6版から第7版に改訂するとします。
検査項目を1つ足す改訂で、承認者は品質保証部長、製造部長と購買部長が合議に入ります。
改訂は年に2〜3回です。
発行した手順書は工場の共有フォルダに置き、検査室の端末から開いて使います。
工程ごとに、ファイルと承認の記録は次のように動きます。
工程 | ファイルに起きること | ワークフローの承認の記録 |
|---|---|---|
起案 | 改訂案のWordファイルに、版数と改訂内容を書いて添付 | まだない |
審査と承認 | 添付のまま。差し戻されたら直して添付し直す | ワークフローに入る |
発行 | 表紙の承認欄に承認日と発行日を入れ、PDFに変換し、文書台帳に登録する | ワークフローの中のまま |
配布 | PDFを共有フォルダに置く。印刷して検査室に掲示することもある | 置き場所には載らない |
旧版の廃止 | 第6版を共有フォルダから外し、廃止日を文書台帳に書く | ワークフローの中のまま |
文書の承認履歴とは、どの版のファイルを誰がいつ承認したかを、ファイルと結びつけて後から示せる記録のことです。
ワークフローに残るのは、承認者と承認日時、申請に添付されたファイルまでです。
置き場所のPDFとの結びつきは、どこにも書かれていません。
私も相談の場で、承認したファイルは申請の添付に残るので大丈夫です、と答えかけたことがあります。
そこで、共有フォルダのPDFとその添付が同じだとどう示すのかと聞き返されました。
決裁した時点の添付をワークフローの中で動かさない設計は、ワークフローの添付ファイルは、欄をどこまで分けるかで整理しています。
今回扱うのは、外に出たファイルのほうです。
承認後の書き込みと2つの運用
承認日は、承認が下りるまで決まりません。
承認日をファイルの中に書く限り、承認した添付と配るPDFのあいだに差分が出ます。
論点は、承認のあとに加えた差分を、誰が何で加えたか説明できるかです。
説明の仕方は2つあります。
- 承認後に手を加えない運用:本文を確定したPDFを承認し、承認後は何も書き込まない。承認者と承認日時は、PDFの隣に置く承認記録の帳票に載せる
- 承認後に人が書き込む運用:承認日の記入とPDFへの変換を人がおこない、事務局が変換後のPDFを承認した添付と見比べた記録を残す
承認後に手を加えない運用なら、差分そのものが出ません。
ただし、改訂案を直すたびにPDFを作り直して添付し直す手間があり、表紙の承認欄に承認日を書く慣行とも両立しません。
発行日も同じで、PDFに入れるなら承認前に施行予定日として書き、入れないなら置き場所のファイル名や文書台帳の側で示します。
承認後に人が書き込む運用なら、承認の工程と表紙の書式は今のままで済みます。
その代わり、配ったPDFが承認した内容と同じだと言えるのは、見比べた記録があるときだけです。
記録のない過去の分は、今から見比べ直しても、発行の時点で同じだったことまでは示せません。
どちらに寄せるかは、改訂の頻度と、表紙の承認欄をどこまで残したいかで決まります。
WordとPDFのどちらを正式な版とするかは、文書を所管する部門が決めます。
承認済みの版を示す4つの方法
承認者と承認日時をどこに書くかで、方法は4つに分かれます。
方法によって、ダウンロードや印刷のあとも記録が付いていくかどうかが変わります。
方法 | 承認者と承認日時が書かれる場所 | ダウンロードや印刷のあとも付いていくか | 弱いところ |
|---|---|---|---|
承認記録の帳票を隣に置く | 申請から出力した帳票のPDF | 帳票と一緒に渡せば付いていく | 帳票もファイルなので差し替えられる。拠り所はワークフローの申請 |
表紙の承認欄に書く | 表紙の承認欄や改訂履歴の表 | 付いていく | 誰でも書き込めるため、承認を受けた裏付けにならない |
置き場所の属性に持たせる | 文書管理システムのファイルの属性 | 置き場所の中だけ | 連携で送れる項目に限られる |
ハッシュ値を記録する | 申請フォームの欄 | ファイルには付かない | 照合する人が値を計算しないと使えない |
承認記録の帳票は、ワークフローの帳票出力で作ります。
帳票の雛形に申請番号と各段の承認者、承認日時を差し込める製品なら、申請ごとに承認記録をPDFで出力できます。
出力できる時点を承認完了後に絞れる製品なら、途中の帳票が出回ることもありません。
承認完了後に帳票をクラウドストレージの指定フォルダへ自動で置ける製品もあります。手順書の置き場所がそのクラウドストレージなら、手順書と帳票を同じフォルダに並べられます。
表紙の承認欄は、紙の押印欄から続く形で、手間は最も小さく済みます。
ただし、Wordの表に文字を入れるだけなので、承認を経ていないファイルにも同じ記載ができます。
置き場所の属性は、文書管理システムとワークフローを連携させ、申請の項目の値をファイルの属性として持たせる方法です。
送れる項目は製品の組み合わせで決まり、承認者と承認日時を送れない組み合わせもあります。
ハッシュ値は、ファイルの中身から計算する値です。
中身が同じなら同じ値になり、1文字でも変われば別の値になります。ファイル名を変えても値は変わりません。
同じWordファイルから書き出し直したPDFでも作成日時などが入るため、値は一致しません。
記録する対象は、実際に配るPDFです。
WindowsのPowerShellにも計算するコマンドがあり、特別な道具は要りません。
承認後に手を加えない運用と組み合わせて効くのは、帳票とハッシュ値です。
時系列で並べると、次の4段になります。
- 申請者が、本文を確定したPDFを添付し、申請フォームの「添付したPDFのハッシュ値」の欄に値を書いて申請する
- 経路の最後の段で文書事務局が、添付をダウンロードして値を出し直し、欄と一致するのを見てから承認する。最後の段に置けば、途中で差し戻しがあっても完了直前の添付で確かめられる
- 承認が完了すると、承認記録の帳票に申請番号、各段の承認者と承認日時、ハッシュ値が並ぶ
- 事務局が、申請の添付をそのまま置き場所に置く。照合するときは、置き場所のPDFから値を出して帳票の値と比べる
値が一致すれば、そのPDFは帳票に載った申請の添付と同じ中身です。
帳票そのものが本物かどうかは、ワークフローで同じ申請を開くか、帳票を出し直して確かめます。
照合する人ごとの方法の使い分け
照合する人は3者に分かれ、求める深さが違います。
照合する人 | 知りたいこと | 足りる方法 |
|---|---|---|
現場の読み手(検査員) | 開いている版が今有効か | 版数の表示、置き場所や文書台帳での発行日、旧版の撤去 |
文書事務局(品質保証部) | 置き場所の版と文書台帳が合っているか | 承認記録の帳票、置き場所の属性 |
監査や取引先 | このファイルが誰のいつの承認を受けた版か | ハッシュ値を載せた承認記録の帳票と、ワークフローの申請 |
検査員が有効な版を開けるかどうかは、承認とのつながりではなく、旧版を置き場所から外す運用で決まります。
事務局は、手順書の隣に承認記録の帳票があれば、どの版がどの申請で承認されたかをワークフローを開かずに見分けられます。
監査や取引先は、抜き取った1本について、承認を受けた版だと示すよう求めます。
社内の監査なら、帳票のハッシュ値で置き場所のPDFとの対応を見せ、帳票の拠り所としてワークフローの申請を開きます。
取引先に写しを出すときは、承認記録の帳票も添えれば、写しと帳票が対応していることは受け取った側でも確かめられます。
受入検査手順書は、検査員と監査の両方が照合する文書です。
改訂が年に数回で、改訂案をPDFで作り直す手間も小さいため、上の4段に文書台帳で発行日を示す運用を足した形が合います。
社外へ出ず、監査で写しを求められることもまれな社内規程なら、承認記録の帳票だけで足りることもあります。
承認の記録そのものを監査でどう示すかは、ワークフローの監査対応。閲覧権限では答えられない質問で扱っています。
まとめ
手元の文書を種類ごとに並べ、それぞれを誰が照合するかを書き出すところから始めると進めやすくなります。
ハッシュ値の欄と事務局の確認の段が要るのは、そのうち監査や取引先が照合する一部の文書です。
よくある質問
文書管理システムの側で承認まで回すなら、ワークフローとの分け方はどう決めますか?
承認者が、どの申請をどちらの画面で承認するのかを迷わない分け方にします。
文書の改訂だけを文書管理システムで承認すると、承認者の割り当てや代理承認の設定を2か所で持つことになり、組織変更のたびの手入れも2か所に増えます。
旧版は何を残しておけばよいですか?
旧版のファイルに加えて、その版の承認記録の帳票と、有効だった期間を辿れるようにしておきます。
ファイルだけでは、過去のある時点でどの版が有効だったかが分からないためです。
残す期間は文書管理規程で決めるもので、文書の種類によって変わります。
印刷して掲示している手順書は、どう扱いますか?
改訂のたびに古い掲示を回収する担当を決めておきます。
置き場所の旧版を外しても、掲示した紙は誰かが剥がすまで残るためです。
この記事の整理が、文書ごとに照合する人を書き出すときの手がかりになれば幸いです。