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差し戻しかコメントか。承認者の質問は答えを見て決める

承認者の質問は、差し戻しで聞くべきなのか

承認も差し戻しもせずに稟議の画面を閉じる承認者がいます。内容に不備があるわけではなく、確かめたいことが1つあるだけです。

承認はまだ押せないけれど、差し戻すほどの話でもない。画面に並んでいるのは、承認・差し戻し・却下のボタンです。コメントに書いてもいつ気づいてもらえるか分からないため、チャットで聞いておく。こう判断するのは自然なことです。申請者のほうも、チャットで聞かれればすぐに答えます。答えを聞いた承認者が承認を押し、稟議は先へ進みます。

よく言われる使い分けは、質問はコメントで、修正は差し戻しで、というものです。手段の分け方としては筋が通っています。ただし、この使い分けは質問をどこで聞くかを決めているだけで、答えが返ってきたあとにどうするかは決めていません。

本記事では、答えが何を動かすかで、残し方を3つに分けて整理します。社内で使い分けを決めるときの手がかりとして使ってください。

承認者の質問は、差し戻しで聞くべきですか

質問の段階では差し戻さず、申請の記録の中で聞きます。差し戻すのは、答えによって申請の内容が変わると分かったときです。答えが判断の根拠を補うだけなら記録に残して承認し、決裁と関係のない段取りの話なら記録の外で済ませても差し支えありません。

差し戻しとは、承認者が申請を申請者の手元に戻し、内容の修正と再申請を求める操作です。却下と違って申請は終わらず、直して出し直せば経路が再開します。

本記事では、次の1件を通し例として使います。営業部から上がってきた展示会出展の稟議で、来年2月の展示会に2小間で出展し、出展料とブースの施工費を合わせて320万円。施工は付き合いのある1社から見積を取っています。経路は営業部長、合議で経理、決裁が管理本部長です。

この稟議に3つの質問が出て、それぞれに答えが返ってきたとします。

質問

返ってきた答え

答えが動かすもの

答えの残し方

ブースに立つ要員は何人か(営業部長)

4人で交代する

何も動かさない

記録の外でよい

施工の見積が1社なのはなぜか(経理)

昨年2社を比べてこの業者に決めた

判断の根拠

記録の中に残して承認

1小間に減らせないか(管理本部長)

来場者との商談席に2小間が要る

判断の根拠

記録の中に残して承認

1小間に減らせないか(管理本部長)

1小間で足りる

申請の内容

差し戻し

要員の人数は、この稟議の金額に人件費や出張費を含めていなければ、決裁の判断には関わりません。チャットで聞いて終わりにしても、あとで困る人はいません。

見積が1社の理由は、答え次第で経理が承認するかどうかが決まります。昨年比べて決めたという答えが、経理の承認の根拠です。根拠は、決裁の記録と一緒に残っていないと意味がありません。

同じ1小間の質問でも、答えによって行き先が分かれます。2小間が要る理由が返ってくれば、内容は変わらず、答えが根拠になります。1小間で足りるなら金額も規模も変わるので、申請そのものを直して出し直します。

答えの残し方は、質問ではなく答えを見てから決まります。経理の質問も、相見積を取り直すという答えなら金額が動きます。

質問はコメントでという使い分けは、どこで回らなくなりますか

3つの場面で回らなくなります。申請者がコメントに気づかない場面、後ろの承認者がコメントを読まない場面、コメントで合意した変更が本文に戻らない場面です。

ワークフローの多くには、申請にコメントを残す機能があります。コメントで聞き、コメントで答えてもらえば、やりとりは記録の中に残ります。

1つ目は、申請者がコメントに気づかない場面です。承認依頼は通知されても、申請中のコメントが申請者に通知されるかは製品や設定によって分かれます。気づかれないまま数日が過ぎ、承認者はチャットで聞き直します。

2つ目は、後ろの承認者がコメントを読まない場面です。経理がコメントで見積の理由を確かめ、承認したとします。管理本部長が本文と添付だけを見て判断するなら、その根拠は決裁者に届いていません。

3つ目は、コメントで合意した変更が本文に戻らない場面です。管理本部長がコメントで1小間にできないかと聞き、申請者が1小間で進めると答えた。管理本部長はそれを見て承認を押します。記録の中で合意はできていても、決裁された本文は2小間・320万円のままです。

日本の稟議では、差し戻さずに決める処理もよく選ばれます。差し戻すより早く決まるためです。ただし、何と食い違うかは処理によって違います。

  • 1小間とすることを条件に、承認時のコメントに書いて承認する場合は、本文と決裁した中身が食い違う
  • 決裁者が本文の金額を直して承認する場合は、本文は合うが、営業部長と経理が見た320万円の案件と食い違う

発注や支払の申請が稟議本文の金額を引いてくる運用なら、前者の食い違いはそのまま次の工程に流れます。

答えが返ってきたあとに、何を決めますか

差し戻すかどうかと、答えを誰に見せるかの2つです。

1つ目の場面は、通知の設定で軽くできます。残る2つは、どちらも答えが返ってきたあとで起きています。質問はコメントでという使い分けは聞く手段を決めていますが、答えを見たあとの分岐と、答えの届け先は決めていません。

管理本部長の質問を時系列に並べると、こうなります。

  1. 管理本部長が稟議を開き、1小間に減らせないかと考える
  2. 申請者に、小間数の理由を尋ねる
  3. 申請者が答える
  4. 答えを見て、承認するか差し戻すかを決める
  5. 承認するなら、答えを根拠としてどこに残すかを決める

使い分けのルールが手当てしているのは2だけです。3つ目の場面の食い違いは、4で差し戻さずに承認したことから生まれています。2つ目の場面で根拠が届かなかったのは、5で残し方を決めていなかったためです。

4で決めるのは、答えが申請の内容を変えたかどうかです。金額・数量・相手先・時期のどれかが変わるなら、差し戻して本文を直します。内容が変わって差し戻す以上、前の承認者にも回し直すのが筋です。営業部長と経理が見たのは、変わる前の320万円の案件だからです。

金額が下がって決裁区分が変わる場合もあります。再申請で経路の条件が判定し直されるか、取り下げて新しく起票し直すかは、製品と運用で分かれます。

5で決めるのは、答えを誰に見せるかです。答えを聞いた承認者が自分で判断を終えるなら、コメントに残せば足ります。後ろの承認者も同じ根拠で判断するなら、届く形で渡す必要があります。

質問はコメントで、差し戻しは直すときだけ、という使い分けだけでは、この5が抜けます。決裁者が本文と添付しか見ない運用では、コメントに書かれた根拠は届きません。どこで聞くかと、答えが誰の目に届くべきかは、別の問いです。

チャットや口頭で聞くこと自体が悪いわけではありません。急ぎの稟議なら、電話のほうが早く片付きます。そのときに要るのは、答えの要点を記録の中に書き戻す一手間です。

決裁後に補えないのは、どの状態ですか

決裁の根拠が記録の外にある状態と、本文と違う内容で決裁された状態の2つです。申請者がコメントに気づかない、承認者がコメントを読まないといった弱点は、通知や運用で後から軽くできます。

弱点

起きること

後から手当てできるか

申請者がコメントに気づかない

回答が遅れる

できる。通知の設定や、チャットへの転送で軽くできる

後ろの承認者がコメントを読まない

根拠が決裁者に届かない

できる。承認時のコメントに要点を書く運用で補える

質問のために差し戻して経路が戻る

前の承認者がもう一度承認する

できる。質問は差し戻しで聞かないと決めれば起きない

答えがチャットや口頭にしかない

何を根拠に承認したかが残らない

できない。決裁後に作った記録は、作った時点の記録になる

本文と違う内容で承認した

決裁された中身と案件が食い違う

できない。決裁済みの本文を書き換えると、何を決裁したかが分からなくなる

チャットの履歴は、保存期間が過ぎれば消えます。口頭のやりとりは、最初から残りません。答えた申請者や聞いた承認者が異動すれば、思い出せる人もいなくなります。

決裁から1年たって、施工の見積がなぜ1社だったのかを問われたとします。経理が承認したことは記録に残っています。ただし、何を確かめて承認したのかは、記録のどこにもありません。

後から手当てできる側にも、見落とされやすいものがあります。質問のたびに差し戻していると、差し戻しの中に、不備で戻したものと質問のために戻したものが混ざります。差し戻しを減らそうと件数を集計したとき、質問のぶんまで不備として数えられてしまいます。差し戻しの理由を類型に分けて棚卸しする方法は、稟議の差し戻しが減らないのは、承認する側の判断基準が申請画面に載っていないからで整理しました。

質問のための差し戻しで経路が戻る待ち時間は、ワークフローの承認が遅い。待ち時間は4つに分かれるで往復の時間として扱っています。

答えは、後ろの承認者にどう渡しますか

渡し方は3つあり、どれを選んでも何かを引き受けます。答えの残し方で最後まで分かれるのは、根拠を補う答えを、後ろの承認者にどう渡すかです。

渡し方

管理本部長に届くもの

引き受けるもの

コメントに残すだけ

開けば読める。開かなければ届かない

決裁者がコメントを読むかどうかに任せる

経理が承認時のコメントに要点を書く

承認履歴の中で、経理の判断と並んで届く

承認者が要約する手間

差し戻して本文に書き足してもらう

本文の一部として届く

内容は変わらないのに経路が戻る

3つ目は、根拠の補足は差し戻さないという線から外れます。それでも、決裁者が本文と添付しか読まない企業では選ばれます。その場合は、どの種類の根拠なら本文に書き足させるかを決めておきます。差し戻しの件数を数えるときに、質問のぶんと見分けられるためです。

合議で経理が入る稟議では、経理の確認がどの段の判断に効くのかを先に決めておくと、渡し方も選べます。合議の位置づけは、並列承認で合議を組む前に、異議の出口を決めておくで扱いました。

なお、コメントの通知先や承認時のコメントの見え方は、製品の画面で確かめられます。一方、決裁者が本文と添付しか見ないのか、コメントまで読むのかは、決裁者の普段の読み方を知っている人にしか分かりません。

まとめ

承認者が質問したとき、答えの残し方は答えが何を動かすかで決まります。

  • 差し戻しとは、申請を申請者に戻し、内容の修正と再申請を求める操作
  • 質問の段階では差し戻さず、記録の中で聞く
  • 答えで申請の内容が変わるなら差し戻し、判断の根拠を補うなら記録の中に残して承認、決裁に関わらない段取りなら記録の外でもよい
  • 質問はコメントでという使い分けは聞く手段を決めているだけで、答えを見たあとの分岐と届け先は別に決める必要がある
  • 内容が変わって差し戻したら、前の承認者にも回し直す
  • チャットや口頭で聞いたときは、答えの要点を記録に書き戻す
  • 通知の見落としや質問のための差し戻しは後から手当てできる。根拠が記録の外にある状態と、本文と違う内容での決裁は、決裁後には補えない
  • 根拠を後ろの承認者に渡すかどうかは、決裁者が何を読んで判断しているかで決まる

よくある質問

条件付き承認は、使わないほうがよいですか

承認時のコメントに条件を書くだけだと、本文と決裁した中身が食い違ったまま残ります。決裁後には補えない側の状態です。条件付きで決めたいときは、本文の側を合わせておくのが無理のない形です。決裁者が本文を直すか、差し戻して本文を直してから承認するかのどちらかになります。前者を選ぶなら、前の承認者が見た内容とのずれをどう扱うかも併せて決めておきます。

承認者がチャットで質問するのを、禁止したほうがよいですか

禁止すると、急ぎの稟議ほど止まりやすくなります。チャットで聞くかどうかより、答えの要点が記録の中に戻ってくるかのほうが、あとで効いてきます。書き戻しを申請者がやるのか承認者がやるのかは、決めておきたいところです。

差し戻したあとは、最初の承認者から回し直すべきですか

内容が変わったなら、前の承認者が見たのは変わる前の内容なので、回し直すのが筋です。決裁区分が変わる場合に、再申請で経路を判定し直せるか、起票し直しになるかは製品と運用で分かれます。根拠を書き足しただけの差し戻しなら回し直す意味は薄く、その差し戻し自体を避けられないかを先に考える余地があります。

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