自己承認をどこまで残すか。承認者が自分になる申請

こんにちは。シンプルなのに多機能で圧倒的に使いやすい、クラウドワークフロー「kickflow」のメディア運営チームです。
「部長が出した申請が、部長本人の承認待ちになっている。これは自己承認ではないのか」経路を管理する情シスに、こうした問い合わせが届くことは珍しくありません。
経路は役職と所属から承認者を引きますが、申請者も役職と所属を持っているため、部門長の申請では両者が同じ人に当たります。
申請者と承認者が同じときに承認させない設定を持つ製品もあり、それで片づく申請もあります。ただ、規程の中に押せる人が他にいない申請では、禁止しても承認者は現れません。
そこで今回は、自己承認が経路で解けるかどうかの分かれ目と、自己承認を残す範囲の線の引き方を解説します。
この記事の要点
- 自己承認が経路の設定で解けるかどうかは、申請者の役職の高さではなく、決裁権限規程の中に本人以外の決裁権者が残っているかで決まります
- 部門長の申請では、自分のステップの扱い方が4つあります。部門長本人が規程上の決裁権者になる申請を1つ上の上長に回すには、規程に繰上げの一文が要ります
- 担当役員の決裁で完結する区分では、決裁ラインの外へ回す、決裁者の人数を増やす、確認の時期をずらす、の3つで第三者の目を足せます。手ごとに、確認が入る時点が違います
- 自己承認を残す線は、金額、書式の種類、部門のどれかで引き、繰上げの一文のただし書きとして規程に書きます。起案の時点で支出の有無が決まらない申請だけは、どの線でも判定できません
自己承認が生まれる3つの場面
自己承認が生まれる場面は、申請者が部門長のとき、役員のとき、社長のときの3つです。経路の組み替えで解けるかどうかは役職の高さでは決まらず、決裁権限規程の中に本人以外の決裁権者が残っているかで決まります。
自己承認とは、申請した本人が、その申請の承認ステップで承認者にもなっている状態のことです。
例えば、従業員600名の卸売業で、情報システム部長が自部署のセキュリティソフトの更新を申請したとします。
年額220万円で、経路は「申請者の所属長 → 管理本部長 → 社長」の3ステップ。1つ目のステップの所属長が、この1件では申請者本人に当たります。
申請者 | 規程の中に残る決裁権者 | 解く方向 |
|---|---|---|
部門長(通し例) | 上位者(管理本部長や社長) | 繰上げの一文があれば、経路の分岐で解ける |
役員(担当役員の決裁で完結する区分) | いない。ただし担当の違う役員はいる | 決裁ラインの外か横から目を足す |
社長 | いない | 監査役や取締役会など、規程の外の仕組みで見る |
組織図を最上位までさかのぼって承認者が見つからないとき、本人を承認者に戻すかステップを飛ばすかを選ぶ作りの製品もあります。社長の申請では、どちらを選んでも第三者は経路に入りません。
相談の場で、部長が自分で出した申請を自分で承認しているという話に、承認させない設定にすれば上位の上長に回ると答えたことがあります。
部長の上に本部長がいない部署はないかと確かめると、社長の直下に置かれた部署が挙がりました。その部署の部長が出した申請は、上にたどると社長に当たります。
部門長の申請で自分のステップを扱う4つの方法
部門長の申請では、自分のステップの扱い方が4つあります。どれを選べるかは設定画面ではなく、規程が起案者と決裁者をどう定めているかで絞られます。
方法 | 設定でできること | 代わりに生じること |
|---|---|---|
本人に押させる | 自己承認を許可するだけで、経路は変わらない | 第三者が見ていない承認が、承認として記録される |
自分のステップを飛ばす | 申請者の役職や所属を条件に、そのステップを実行しない | 飛ばしたステップが履歴にどう表示されるかは製品で違う |
1つ上の上長に回す | 本人を除いて、上位の上長を承認者に当てる | 上位者に申請が集まり、その人が不在だと止まる |
部下が起票する | 経路を触らずに自己承認が消える | 判断した人と申請者が分かれ、実質の起案者が履歴から読めない |
通し例の220万円は社長まで上がるため、本人のステップを外しても決裁者は変わりません。
規程と食い違うのは、部長決裁の範囲に収まる申請を部長本人が出したときです。例えば同じ部長が部内の研修費30万円を申請し、規程が「50万円未満は部長決裁」と定めているなら、決裁権者は申請者本人です。
1つ上の上長に回して管理本部長が決裁しても、規程どおりの決裁にはなりません。
食い違わないのは、規程に「申請者が当該案件の決裁権者に該当する場合は、直近上位者が決裁する」といった繰上げの一文があるときだけです。経路を分岐させる前に、規程にこの一文があるかを見ます。 無ければ、直す対象は経路ではなく規程です。
所属長のステップを、直属の上長を当てる設定で組んでいる場合は注意が要ります。申請者本人を最初から除いて上位の上長を当てる製品では、経路を組んだ人が規程を見ないまま、1つ上の上長に回す形になっていることがあります。
部下が起票する方法は、担当者が自分のアカウントで申請者になる形に限ります。部長が担当者のアカウントで申請する運用は、他人のアカウントを使う操作になるため選べません。
代理申請の機能は本人名義の申請を別の人が起票する仕組みなので、申請者は部長のままで、自己承認は消えません。
この方法を選ぶなら、先に規程が起案者を誰と定めているかを見ます。監査で「この稟議を起案したのは誰か」と問われたとき、履歴に出るのは担当者の名前です。
自分のステップを飛ばしたとき、そのステップが経路から消えるのか、スキップとして残るのかは、ワークフローの兼務で承認者が重なる。どこまでまとめてよいかで扱っています。
1つ上の上長に回した結果、通し例で管理本部長が1つ目と2つ目のステップに並ぶこともあります。同じ人が2つのステップに並ぶ点は兼務と同じで、扱い方は同じ記事の3つの方法が使えます。
役員の申請に足せる3つの手
担当役員の決裁で完結し、社長に上がらない区分では、3つの手で第三者の目を足せます。決裁ラインの外へ回す、決裁者の人数を増やす、確認の時期をずらす、の3つです。3つとも規程の中で完結しますが、確認が入る時点が違います。
例えば、通し例と同じ更新を、IT投資が担当常務の決裁で完結する会社で常務が申請したとします。規程の中でこの区分を決裁できるのは、常務本人だけです。
社長への繰上げを規程に足せば部門長と同じ形で解けますが、担当役員に任せた区分の決裁が社長に戻ります。
足す手 | 担保されること | 代わりに生じること |
|---|---|---|
決裁ラインの外へ回す | 決裁の前に、経理や法務の目が入る | 合議先の位置づけを規程に書く必要が出る |
決裁者の人数を増やす | 担当常務に加えて、担当の違う常勤役員1名の承認がそろわないと通らない | 両方が押すまで止まり、決裁までの日数が伸びる |
確認の時期をずらす | 決裁を先に下ろし、経営会議など規程が定める会議体で追認を得る | 確認が執行のあとに来る。緊急の定義と付議の期限を規程に書かないと常用される |
決裁ラインの外へ回す手は、規程の上では合議にあたります。合議の意味と位置づけは、合議とは何かを解説した記事で整理しています。経路の上では、申請者の役職で分岐させ、役員が申請したときだけステップを足す形で組めます。
決裁ラインの外へ回すなら、経理のチームを承認者とするステップを足します。
決裁者の人数を増やすなら、担当常務のステップの手前に常勤役員のチームを承認者とするステップを足し、そこは1名の承認で進む設定にして、自己承認を許可しません。担当常務のステップは、規程どおり本人の決裁として残します。
確認の時期をずらす手では、追認の扱いを先に決めておきます。会議体の報告事項として聞き置くだけでは、追認になりません。その1件を認めるかを会議体として決めていない以上、何も決まっていないためです。
金額の大きい案件では、会社法上、取締役会の決議が先に要る場合があります(重要な財産の処分及び譲受けなど)。
この場合、確認の時期をずらす手は使えません。追認の結果は、決裁済みの申請とは別の申請として記録し、元の申請と関連づけておく形が取れます。
自己承認を残す線の3つの引き方
自己承認を残す線は、金額、書式の種類、部門のどれかで引き、繰上げの一文のただし書きとして規程に書きます。
繰上げの一文を置くと、部門長が自分の決裁範囲で出す申請は、すべて上位者に回ります。件数の多い少額の申請まで回すと、上位者の手間が確認に見合わなくなります。
ただし書きは、例えば「ただし、10万円未満の案件は申請者本人の決裁とする」といった形です。経路の設定は、そのただし書きを写すだけです。
線 | 自己承認を許す範囲の例 | 抜け道と塞ぎ方 |
|---|---|---|
金額 | 一定額未満の申請 | 分割して線の下をくぐる。「同一目的の案件を分割して起案しない」「継続契約は年額で判定する」と規程に書く |
書式の種類 | 勤怠や届出など、支出を伴わない書式 | 支出のある申請を、支出を伴わない書式で出す。その書式には金額欄を置かず、支出が書かれていたら受付のステップで差し戻す |
部門 | 社長直轄の部門など、部門長の上の決裁権者が社長しかなく、少額の申請まで社長に上がる部門 | 組織変更のたびに例外部門の一覧を見直す担当と時期を決めておく |
規程に書いた線のうち、金額と部門の線は、申請の入力値や申請者の所属で経路を分け、分けた先の経路ごとに自己承認を許すかを決める形で組めます。書式の種類の線は、書式ごとに経路の設定を変えるだけです。
通し例の年額220万円を月額18万円台に割って出す抜け方も、年額で判定する一文が規程にあれば塞がります。規程の1行がワークフローのどの設定に落ちるかは、決裁権限規程の1行は、ワークフローの4か所に分かれるで整理しています。
どの線でも判定できないのが、起案の時点で支出を伴うかが決まっていない申請です。
枠だけ先に取り、金額も取引先もあとで決める稟議は、金額の線でも種類の線でも、内側か外側かが起案時に決まりません。この申請だけは、設定ではなく規程でどちらに寄せるかを決めます。
許す側に寄せるなら、金額が決まった時点で別の申請を出す運用と組み合わせます。禁止する側に寄せると、枠取りの段階から上位者の承認が要り、件数によっては上位者の負担が増えます。
まとめ
自己承認の相談を受けたら、最初に開くのは経路の設定画面ではなく決裁権限規程です。繰上げの一文が無ければ、規程を所管する部門に一文の追加を持ちかけるところから始まります。
そのうえで、書式が使う経路ごとに部門長や役員を申請者に置いてシミュレーションし、本人に当たる書式を洗い出します。線の位置は、その一覧と、枠取りの稟議がどれだけ出ているかを並べて決めます。
自己承認の線を所管部門と話し合うとき、論点を並べる材料になれば幸いです。
よくある質問
申請者自身を承認者に置くステップも自己承認に当たりますか
内容の可否を判断させないステップなら、当たらない使い方があります。上長の承認後に、契約の締結作業などを申請者本人に割り当てるステップがその例です。
ステップの名前と操作の種類を承認ではなく作業の確認として設定しておくと、監査で承認のステップと取り違えられにくくなります。
自己承認を許すかどうかは誰が決めますか
決めるのは、総務や経営企画など、決裁権限規程を所管する部門です。情シスの役割は、規程の線を経路の設定に写すことと、写せない申請を所管部門に返すことです。
内部監査の部門がある会社では、線を引いた時点で共有しておくと、監査で問われたときの説明を規程の側で済ませられます。
自己承認で決裁された申請があとから見つかったら何をしますか
申請はシステム上は完了しており、記録は書き換えられないため、経緯をコメントで書き添えます。
そのうえで、繰上げ先にあたる上位者に事後の確認を依頼し、確認の結果を別の申請として記録します。同じ書式で次の申請が出る前に、自己承認の設定か規程のどちらかを直します。